ドイツと日本
ドイツには大きな木は残す文化がある。
だから街の中には鳥の声がよく聞こえる。大きな山はない国なのに、とても緑豊かな国。自動車産業先進国なのに、車を使うことと使わないことをはっきりと分けて暮らしている。
ガードレールや道路側溝、信号機や電柱なども無駄にはつくらない。
そんな街並みはとても緑にあふれ、自然と共存している。
近年の日本の注文住宅を建てる方がよく気にされていることが、耐震、省エネ、健康、耐久性、メンテナンス。その中で「耐久性」つまり「この家は何年持ちますか?」という質問をよく受けます。
その気持ちはもっともだと思います。1000万円単位の資金を投じて50年近く住まう家を建てるのですから。今の日本の家は約50年前の高度成長期の頃に大量生産された家よりもはるかに高性能で長寿命だと思います。その理由として、地盤調査の上に地盤改良を行い、基礎もしっかりと施工されることで家自体が傾いたりゆがむことがない、また昔のように床下は土むき出しではなく防湿措置がされていることでシロアリ被害のリスクが低減している、構造的なチェック機能も法的に整備されているなどが挙げられます。
でもそれだけでは満たされない思いを抱えながら、家づくりをしている方がいるはずです。
日本人の心の底に流れているアイデンティティー。
ものを大切にすること 自然と共存すること
省エネ、エコに対する取り組みが加速し、私たちひとりひとりの生活の中にも「ものを大切にする」思想が再認識されています。またキャンプや登山、サイクリングなどエコや自然を暮らしの中に取り入れることが流行っていることも日本人にとっては新しいものではなく、ごく自然に順応できることだと思います。
最近はこういった感情が家づくりにも心のどこかで反映されてきていると思います。それを満たしてくれる家とは …
私がドイツに研修に行ったときに感じたドイツと日本の共通点についてお話します。
ドイツは緯度的には北海道よりも上ですが、気候は日本の軽井沢と似ているそうです。湿度は低いようですが雨や雪も日本と同じように降り、環境的にも日本と似ていました。田園風景は北海道のようでした。またドイツ人はまじめでやさしい。自動車産業が盛んである、木がたくさんある、通勤通学に自転車を利用する人とても多いなどなど。
でも日本と同じ点が多いのですがなぜか日本と街並みや風景が違い、とても整然とし魅力的でした。
その理由は街の中の大きな木がたくさん残っていて、鳥の声が至るところで聞こえていたこと。
ドイツには大きな木を伐採するには許可がいるそうです。
また車を乗ることと乗らないことをしっかりと分けていて、街の中で車が入れないエリアがある。合わせてトラムという路面電車がしっかりと整備されています。線路の間には緑化がされている場所もありました。
街の中に電柱やガードレールが少ないのも理由です。
またドイツの街中は戸建てではなく昔からの集合住宅が主流ですが、その建物もシンメトリーであったり、窓の位置がきちんとそろっていました。設計者としてデザイン的には面白みがないと感じましたが、ここまで徹底されているドイツの国民性に逆に納得させられてしまいました。
私がドイツの風景に見たのは、
自然を大切にする
無駄なものは作らない
丈夫で長持ちするものをずっと使っていくこと
でした。日本とすごく似ているのにその結果は明らかに違っていました。
聞いた話ではポルシェが一番長持ちしている車とか。当然高級車で価値があるからだと思いますが、部品やメンテナンス体制がずっとあるからだと思います。ミーレも長い愛用者が多く、それも「丈夫で長持ち」という思想から作られているからこそ。
そんな思想の中に日本人が求めている答えがあるように思いました。
自然と共存し、自然の恵みを活かし、循環させる。
シンプルな家をつくる=部品を最小限にする。
劣化しにくいものでつくる。
日本の最大の恵みである木を活かし、日本の気候に合った伝統的な構法で建てる。普遍的なもの…
日本人が持つ心。
エコハウスは塗り壁下地となる外壁材と断熱材のすべてが 100%木でつくられた ECOボードでつくられます。
外壁には通気層を設けないヨーロッパ基準。それは断熱効果も当然ですが下地材の部品を少なくする=劣化やメンテナンス、不具合のリスクを減らすことにつながります。
石油やセメントなど工業製品で作られた家の部材はどうしても性能の低下や劣化が現れます。木でできているということはしっかりと施工、維持がされていれば材料を取り替える必要がない。
それこそが家の「耐久性」の答えだと思います。
当然リサイクルできるという点も注目されますが、家の骨格となる基礎や構造材、断熱材、外壁材、屋根材が一生ものになるということこそ本来の家の価値だと思います。
なぜドイツ基準の家づくりなのか?
ドイツからもらったヒントを日本の住宅に活かして、家族に大切に受け継がれていく家をつくることこそ、私たち環境住宅研究所が考える家の「耐久性」、すなわち「価値」だからなのです。