人に合わせることと作家性

2024/10/28

4. 人に合わせることと作家性

 

神野 ー
自分が工務店の設計をしているのは、人に合わせる設計でいいと思っていて、その分作家性を殺しているところがあります。宮嶋さんは看板も立てていて当然だけど作家さんなんだけど、いつも一緒に仕事をしていて感じるのはお客様がこうしたいっていった時には合わせてくれていて、でもそこから新しいものをつくっていく気がする。作家さんによっては自分の作風を崩さないで、「それはできません。」って言ってしまう方も多いと思うけど、宮嶋さんはどう考えていますか?

 

宮嶋 ー
そうですねー。なんていうかお客さん自身が本当に欲しいものをわかっていないこともよくあるんですよ。わかったとして、その答えを言った時にお客様は「えっ、何で。そんなもの求めていないです。」っていう感じになるけど多分本当はそれを求めている。それを言っていいのか迷ってしまうんだけど、ジワジワと伝えていく。合わせるというよりは最終的にゴールは一緒ですよね。こちらが我を押し付けるとダメだし、それってお客様のことをちゃんと聞けていないんですよね。もちろん本当に求めているものが理解できた時に、自分が持っている能力を最大限表現できればミッションとしては成功。それがうまくいかないときは大体予算的な問題とか物理的要因とかタイミングとかですかね。

 

辻 ー
宮嶋さんはポジティブ変換が鮮やか。お客様からこのデザインかあって思うものを要望された時に、いやもっともっと考えたらもっといいものになるんじゃないかっていうスイッチが早い。

 

宮嶋 ー
なんか仕事がなくなるよりよくない(笑)。ボツになる仕事も多いんだけど、その時は自分が気付けていなかったことが多くて、突っ走ってボツになっているんだろうなって思う。いかに心を開いてもらえるか、その辺は神野さんって得意なんだろうなって思うけど、どうですか。

 

神野 ー
やっていることは宮嶋さんと全く一緒の考え方でやっているかな。こういうことやりたいって言われるとやってみたいと思うし、やったことなかったら勉強して完璧にしてやろうっていうのは未だにあって。最近はなんだかんだ24年やってきたことってあまり変わってないなぁって思っていて、ズルいけど、もっと変なお客様に来てほしいって思ったりする。突拍子もないことを言われて一緒につくって、できあがって「おーっ。」思ったこともたくさんありました。本当は自分が提案していかなければいけないんだけど...ちょっとズルいね(笑)。原田さんとは28歳違うんだけど、今彼女が持っている間隔とか住宅に対する思いとかどんどん表現してほしいと思っている。それが自分がやっていることと混ざって、より良いものになっていけば面白い。自分も50代になったけど、原田さんが入社してきてくれたことでもっとがんばらなきゃって思っている。三谷さんって今建築の写真を撮っていて、行く会社さんによって撮るものが違うと思うんだけど、こういうものを表現したいっていう「軸」みたいなものってありますか。

 

三谷 ー
そうですね。環境住宅さんにおいては自由にやらせてもらっているので自分の好きな感じをただ撮らせてもらっていて、竣工写真っぽくないんですよ。でも普通は竣工写真らしくないと使えないのでキッチリと撮っています。

 

神野 ー
建築写真を撮るときって、事前に図面などはもらう場合もあると思うんですけど、それでもいきなり現場に行って、置いてあるインテリアなどもその日に知って、お客様もその時初めて会ったりする中で、決めている「軸」というかこういう写真を撮ってやろう見たいなものって決めているんですか?

 

三谷 ー
今の建築写真は暮らしを表現するようなことが流行としてあって、自分も暮らしをどう見せるかを意識していますね。入居前の人がいない家を撮るのって、暮らしが見えないのでうまく撮れないというか誰が撮っても同じ写真になってしまうんです。家族がいたり、子供がいたりするとこの家族の個性が写真に表れてきて、それを表現できたらいいなって思いますね。その日子供がいなくて静かだったりすると僕も静かに撮ってしまったりします。その場の雰囲気やノリで僕の写真は変わるかなと思います。

 

神野 ー
そこが変わるのは、楽しい?

 

三谷 ー
そうですね。あまりいいとは思っていないんですけど、良くも悪くも僕は人に合わせるのが得意なんですよね。それがいい場面もあればそうでないこともあるんですけど、それが写真に出ていると思いますね。

 

神野 ー
それねえ、一緒かもしれないですよ。合わせるの得意ですよね、宮嶋さん。

 

宮嶋 ー
得意!

 

神野 ー
それで、そろっと自分の方に持っていくんだよね。

 

真弓 ー
でも三谷さんもそうなっている気がしますね。

 

三谷 ー
そうですか。でもまだ苦手な気がして、現場によっては吞まれちゃうことも多くて。「あー、今日呑まれたなあって。」後で反省してますね。「こういうものを撮らせてください。」って言えるように、どちらの姿勢も取れるようにならないとなぁって思っています。

 

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